第10回鎌倉同人会講座「鎌倉大仏と研究の“曼荼羅”」
日時:平成三十年十月六日(土) 午後2時~4時
場所:高徳院客殿
第10回鎌倉同人会講座「鎌倉大仏と研究の“曼荼羅”」が、平成三十年十月六日(土)に高徳院客殿で行われました。
鎌倉市教育委員会後援、かまくら学府協力ということもあって、定員の八十名を超える91名の参加がありました。
講師は高徳院住職で、慶應義塾大学教授、動物考古学者と三つのフィールドで活躍されている佐藤孝雄さんにお願いしま
した。
鎌倉のシンボルである露座の大仏は、現在でも造像の経緯など様々な謎に包まれていて、平成二十八年に、大規模な
調査・保存事業が行われました。考古学だけでなく地質学や建築学、またCG画像など最新の技術を駆使して行われた今回
の事業で、大仏殿の存在や造像の方法など、新たに解明されたことが多くあったそうです。
「大仏はいつ建立されたのか」(中・近世の大仏関連資料の探索)、「どのように造られたのか」(鋳継ぎの方法・
鋳造過程・盛り土の分析)、「大仏殿は存在したのか」(礎石の配置とCG画像による復元)、「大仏殿はいつ、どのよう
に倒壊したのか」(『太平記』・『鎌倉大日記』・『鎌倉大仏縁起』による大風や津波についての史料)、
「現在の大仏はどのような状況か」(腐食状況の経年変化・腐食生成物の分析・高精細写真撮影)、「大きな地震に対する
地盤の強度は」(常時微動調査の様子・地盤の壊れやすさ指数分析)、「背後の山はどのように変化したのか」(後光山の
植生の変化・外来獣の影響)などの調査結果をスライドで示しながら、分かりやすい、熱のこもったお話で、参加者は真剣
に聞き入りました。
今回、新たな成果を得ることができたのは、講師のこれまで培ってきた異分野の研究者たちとの縁によって学際的研究に
つながっていったことが大きかったのではないかと、お話からうかがえました。
調査で明らかになったことをもとに、
今後、「高徳院にたくさん残されている古写真の風俗史・環境史的考察」、「外国人の紀行文等に見られる記述の比較文化
学的考察」などの課題にも取り組んで行きたいと、研究への意欲を示されました。
最後に、講座のタイトルを「鎌倉大仏と研究の“曼荼羅”」としたのは、宇宙にあるすべてのものを含んでいる曼荼羅のよ
うに、鎌倉大仏の研究は大学で学ぶほとんどの分野にかかわりがありからです、と締め括りました。
講座のレジメより
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