★第15回鎌倉同人会講座 「鎌倉彫ー鎌倉の中世と現代をつなぐー」の開催報告
令和元年(2019年)10月31日(木)午後2時から、第15回鎌倉同人会講座「鎌倉彫-鎌倉の中世と現代をつなぐ」
が鎌倉彫会館4階会議室で開かれました。
講師は、仏師の彫りと塗りの技術を生かした「鎌倉彫」の伝統を受け継いできた博古堂代表
取締役、後藤家第29代当主
で同人会の会員でもある後藤圭子さん。
会場はほぼ満席。50名の参加がありました。
お話は、およそ800年前に鎌倉が武家の都として栄え、中国から禅宗が伝えられ、鎌倉五山をはじめいくつもの
禅寺が建立された時代からスタート。
当時の寺院建築の様式が、当時の中国の唐様を模して建てられ、内部の装飾や家具、仏具も同様に唐様であったこ
とを、現存する円覚寺舎利殿、建長寺の獅子牡丹文須弥壇、円覚寺の牡丹文前机などの仏具をスライドで提示しま
した。
“鎌倉彫”の出発点は、“堆朱” (ついしゅ:漆を何層も塗り重ね、器を形作り、文様を彫り込んだ漆工芸品)の中国か
らの伝来。この“堆朱”にヒントを得て、本体を木で作り、文様を彫り込み、漆を塗った木彫り漆塗りの仏具を制作した
のが鎌倉彫の始まりであり、“木彫り漆塗り仏具”の作例を以下のスライドで丁寧に解説されました。
こうして、宋から伝来した仏教美術、日本古来の仏師の技、堆朱の技法とデザインなどの要素が永い時間をかけて渾然
一体となりできたものが“鎌倉彫”であり、室町時代、桃山時代、江戸時代へとお話が進みました。
そして明治維新です。その直後に起こった“神仏分離”、“廃仏棄釈”の激動の中で、危機に直面した鎌倉の仏師たちは
鎌倉彫を再興に努め、現代の鎌倉彫の“彫り・塗りの技法、デザインの多様化”に到ったことを鮮やかに語られました。
さて、昨秋、雪ノ下一丁目の発掘現場(かつて北条一族が住まいした場所のあたり)で、鎌倉時代の地層(深さ3メー
トル)
から木片が発見されました。講師は、ベンガラ色の“花びらの模様”の彫りの特徴から“鎌倉彫”的なものを感じる
こと、また賓客用の高級な器(うつわ)の断片であるの可能性、ひょっとしたら生活用品としての鎌倉彫の最古のもの
かもしれないとの思いを語られました……。
後藤圭子さんのお話を受けて会場から沢山の質問がいただきながら、現代に見合った“鎌倉彫”の展開を、日常生活品
としての面と、美術品としての両面から様々に模索する中で、これから鶴岡八幡宮直会殿で開催する予定の“鎌倉彫コン
ペ事業”について語られました。
講座を終えたあとは、“鎌倉彫会館”のご厚意で、鎌倉彫資料館「鎌倉彫の歴史と作品に出逢うミュージアム」を観覧
しました。 |
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